中国人との国際結婚の手続き
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*中国人国際結婚手続き1

Q:中国法での国際結婚の手続きの実質的成立要件と日本法での国際結婚の手続きの実質的成立要件にはどのような違いがあるでしょうか。
A: 2005Aug11

 

中国の国際結婚の手続き

日本の国際結婚の手続き

結婚意思の合致*1

必要(修正婚姻法5条)

必要(民法7421号)

結婚年齢*2

男性22歳、女性20歳(修正婚姻法6条)。但し、50条による少数民族の例外あり。

男性18歳、女性16歳(民法731条)

重婚の禁止*3

あり(修正婚姻法32項)

あり(民法732条)

近親婚の禁止*4

あり(修正婚姻法71号)

あり(民法734条)

疾病による禁止*5

あり(修正婚姻法72号)

なし(憲法24条等)

地位による禁止*6

あり(外国人婚姻登記通知4条)

なし(憲法24条等)

独立生計要件等のその他の要件*7

ある場合があり得る(参考、1995年施行の「上海市渉外婚姻管理暫行弁法」)

なし(憲法24条等)

女性の待婚期間*8

なし

あり(民法7331項)

未成年婚の父母の同意*9

なし

あり(民法7371項)


[注] 中国の国際結婚の手続きに係る新(修正)婚姻法は、現在、さらに中国の民法典への編入作業を進めているとされる。

*1 したがって、偽装婚は日中両国で、基本的には、「無効」と解するべきであろう(なお、加藤美穂子著「詳解中国婚姻・離婚法」(初版)88頁、98頁。また、無効と取消の範囲は日中で異なるのは当然である。「戸籍時報」562、75頁。)。ただ、中国の国際結婚の手続きに係る婚姻法の比重は、偽装婚というよりは、中国国内での略奪婚のような、結婚意思に瑕疵のある、社会問題に比重があるようである。他方、日本の民法においては、最近の社会問題は「略奪婚」のような類型には無く、むしろ「偽装結婚」のように思われる。たとえば、入管の分野だけではなく、リセット商法などという、クレサラの分野にも見られる。

*2 国際結婚手続き関連通知(昭和57年9月17日付け法務省民二第5700号第2課長通知):要旨
「(日本に在る20歳の中国人男と23歳の日本人女との婚姻届の受否について)・・・標記の件について、管内横浜地方法務局長から別紙のとおり照会がありました。当職としては、中国駐日本国大使館領事部発給の婚姻要件具備証明書が添付されていても、中華人民共和国婚姻法第5条(筆者注:旧婚姻法5条)に定める婚姻年齢に違反しているので受理すべきでないと考えます。しかし、中国駐日本国大使館領事部担当官は、当局の照会に対し、海外に在住する国民(華僑)の婚姻年齢等に関しては、同国婚姻法の規定にかかわらず、在住する国の法律による取扱いをするよう本国政府の指示を受けている旨回答しており、要件具備証明書が発給されている以上受理して差し支えないとの意見がありますので御指示を得たく照会します。・・・・
・・・当局管内横浜市南区長から、婚姻届の受理につき伺いがあり、当職としては、中国駐日本国大使館領事部の要件具備証明書は添付されておりますが、昭和55年12月15日法務省民二第7094号法務省民事局第2課長通知に基づく中華人民共和国婚姻法の規定から、受理すべきでないと考えますが、疑義がありますので至急御指示を賜わりたく、お伺いします。
 おつて、中国人男は昭和54年1月7日中国浙江省からわが国に入国した者で在留資格は4−1−16−3(筆者注:以前の在留資格は数字で表されていた。)でありますので、御参考までに申し添えます。
<回答>・・・標記の件については、日本国駐在中華人民共和国大使館領事部発給の証明書の添付があるので、受理するのが相当と考えます。なお、同国においてはその婚姻法の解釈上、在外華僑の婚姻要件に関しては、個別の事案ごとに、同法の精神に反しない限り、居住地国法の婚姻要件を考慮して弾力的に取り扱うこととしている模様であり、本件の証明書もそのような取扱いの下に発給されたものと認められるところから、同証明書により当該中国人男について同国法上の婚姻要件を具備しているものと認めて差し支えないとしたものであるので、念のため申し添えます。」
<筆者コメント>
 中国側の国際結婚の手続きに係る中華人民共和国民法通則第147条による「反致」(法例32条)と解されるが、この通知当時は、まだ民法通則147条は施行されていなかったので、通知にはその趣旨が出ていないに過ぎない(施行は西暦1987年[昭和62年]1月1日になる。なお、岩井伸晃著「中国家族法と関係諸制度」46、47頁、「戸籍」770号79頁。)。

*3 日本法では重婚は、通説的には、法律婚同士の重婚のみをいうのに対し、中国法では、重婚は事実婚との重婚、つまり内縁的関係をも含みうる点が異なる(加藤美穂子著「詳解中国婚姻・離婚法」(初版)61頁以下。)。日本でも新派刑法学者等の中に、事実婚で「重婚罪」の構成要件該当性を認容する見解が存在するわけであるから(「大コンメンタール刑法」刑法184条注釈、西田典之著「刑法各論」刑法184条解説等。)、日本でも成り立たないわけでもない。ただ、日本では歴史的な見解と思われ、畢竟、中国の国際結婚手続きに係る修正婚姻法3条2項に「配偶者を有する者が他の異性と同棲することを禁止する」とわざわざ規定したのは、現在の中国の社会の実情を鏡としていると解される。一般には、必要がないのに法を作ることはない。つまり、それだけ「不倫」が多いと推定できる(同旨、加藤美穂子著「詳解中国婚姻・離婚法」(初版)63頁)。この点で、日本人向けの中国の本の中には、中国人男性は何よりも女性を大切にして、浮気や内縁等は無いかのような趣旨で記載されてある場合もあるが、筆者は入管法を専門にしており、入管や国際結婚の手続きが専門であって、国際結婚夫婦を日常的に扱うこともあり、また、折しも、新しい婚姻登記条例により、離婚が簡単になったために流行しているというニュースも耳に入っているところでもあり、強い違和感を感じることもある。ちなみに、中国の結婚法制度ないし慣習の歴史は、むしろ一夫多妻制の容認であって、かつては「妾」が認容されていたとされている(加藤美穂子著「詳解中国婚姻・離婚法」(初版)61頁)。ただ、その点に関しては、多くの国でそういう時期はあったことも否めない。

*4 禁止射程範囲は、中国法が4親等内の傍系血族までなのに対し(中国法にいう「三代」とは、日本法の「4親等」をいう。ネット上に明らかな誤訳のサイトがあったので留意されたい。国際結婚の手続きにおいては、翻訳ソフトなどで安易な翻訳はできない。)、日本法では3親等なのが異なる(前掲書64頁、「新版渉外戸籍のための各国法律と要件」118頁等多数。)。近親婚の禁止の趣旨は、基本的には優生学的な配慮で、日中共通と解される。禁止の射程範囲の違いは、結婚の自由との比較衡量において、その優生学等の科学的視点をどこまで重視するかの差異のようにも思われるが、「社交の場が狭いことを考慮し」たものという中国の研究者の見解がある(「戸籍時報」562、86頁。)。禁止範囲については、中国では論点のようである。

*5 中国側の国際結婚の手続きに係る旧婚姻法(80年婚姻法)では「ハンセン病の未治癒患者」が例示列挙されていたが、修正婚姻法ではこれが削除されているものの、なお「医学上結婚すべきではないと認められる疾病に罹患している者」の結婚が禁止されている(前掲加藤美穂子著「詳解中国婚姻・離婚法」(初版)69頁)。他方、日本側の国際結婚の手続きに係る日本民法にはこのような禁止規定は、重大な遺伝病であれ、エイズであれ梅毒であれ精神分裂症であれ、存しない。もし、日本の民法にこのような禁止規定を設けた場合、おそらく、憲法学的には、憲法24条1項2項や13条に違反して違憲無効と解される。他方、刑法学的には、上記に上げた新派刑法学的な「重婚」観と相俟って、このような疾病による禁止規定は、日本の刑法学で言えば、新派に親和的と思われる。なお、このことの帰結として、中国で日本人と中国人が中国法で国際結婚手続きを行う場合、疾病を理由に結婚できないことがあり得る。しかし、そのような状態でも日本で日本法で国際結婚手続きを行うことは可能と解する。なお、中国ではこの疾病による禁止の規定は論点であって、弾力的な対応があり得ることも示唆されている(「戸籍時報」562、65頁。)。

*6 中国法での国際結婚の手続きの場合、一定の「現役軍人」、「外交要員」、「公安要員」、「機密要員(等)」、「労働教育を受けている者」、「服役者」は外国人、すなわち日本人とは結婚できない(外国人婚姻登記通知。加藤美穂子著「詳解中国婚姻・離婚法」(初版)495頁、岩井伸晃著「中国家族法と関係諸制度」44頁。)。これに対し、日本法では、基本的にはそのような制約は無い点が異なる。

*7 いわば日本の入管法的な発想にいう「独立生計要件」が国際結婚のそれ自体の要件になる場合がありえ、その場合、「在職証明書及び資力証明書の添付が求められている」(岩井伸晃著「中国家族法と関係諸制度」44頁は1995年施行の上海市の法令を例に言及する。)。これが中国法制度全体で適法とすれば、中国の婚姻法の下位法への「法律の委任」の範囲は、いわゆる上乗せ規制でもかなり広いことになろう。おそらくこのような扱いが理由で、一般に、中国で国際結婚の手続きを行う場合には、地域により必要書類が異なる場合もあるといわれる(在中国日本国大使館、及び在日本中国大使館領事部)のだと解される。
これに対し、日本法での国際結婚の手続きでは、基本的にはそのような制約は無い点が異なる。もっとも、「独立生計要件」を充足しない場合、入管によって、日本人の配偶者等の「在留資格」が、許可されない場合が多いであろう。

*8 中国側の国際結婚の手続きに関して、中国法に待婚期間の制限が存しない理由につき、岩井伸晃著「中国家族法と関係諸制度」30頁は、「法律上の嫡出推定の制度が存在しないこと」を援用される。実務的には、たとえば、日本以外の外国には、中国に限らず、待婚期間の制限が無いか、あるいは小さい国も珍しくないところ、そのような国で日本人が創設的に国際結婚を成立させた場合、仮にそれが日本法の待婚期間中だったとしても、当該国際結婚は、日本法でも有効と解釈され得ることに言及する価値がある(「レジストラブックス111」308頁は、取消うべき結婚と解するようであるが、実務的には取消は考えがたく、畢竟、有効に確定しうる。)。

*9 これは中国法には未成年での結婚の概念を容れることが無いからである。それゆえ、日本法の意味での成年擬制(民法753条)も存しない。
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